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◆毎日見かける近所の顔なじみの猫。その猫、いつも同じ場所にいると思いませんか。いつも我が者顔で所定の位置に陣取っているノラ猫。◆2月の終わりぐらいに珍しい光景に出会った。電車の踏切脇に直径7p、高さ30p位のコンクリートポールが在るが、三毛猫が不安定さも感じないで微動だもせず乗っていた。次の日も同じ様な姿勢で線路を睨んでいる、凛として。◆家内曰く、『鉄ねこ』じゃない。一笑に付しました。◆猫は単独生活で、それぞれにテリトリー(縄張り)を持ち、その範囲内で生活や狩をしている。ホーム・テリトリーは、くつろぎの場所で同居している猫や人間以外の侵入を許さず、ハンティング<CODE NUM=00A5>テリトリーは、直径500m以内の範囲で狩をする場所で、よそ者の猫が侵入した場合は、決闘を行う事もあるようです。◆我が家の猫は、主人が居る時だけ決闘をして、助けて貰える事を知っている。しかし、勝ったのを見たことはない。◆因みに、よく人の足にまとわりつくようにして顔などをスリスリするのは、「自分のもの」という印をつけているらしい。また、ヒゲをピンと立てている時は、うれしい証拠で、ヒゲとしっぽを立てて近づいてくるのは遊んで欲しい時│だそうだ。

(3月25・29日合併号掲載)

◆川崎市内にある日本民家園では、東日本の代表的な民家など25件の建物をみることができる。急速に消滅しつつある古民家を永く将来に残すことを目的に、昭和42年に開園した古民家の野外博物館。◆この中に田麦俣とは谷ひとつを隔てた大鳥川沿いの松沢に所在していた「旧菅原家住宅」がある。それも川崎市が所有し神奈川県指定重要文化財。不思議な感じがする。◆この家の外観の最も大きな特徴は、寄棟屋根に高窓(ハッポウ)や切上げ窓(高ハッポウ)が設けられ、小屋裏の採光と換気に役立てている。豪雪地帯の建物らしく内部へ直接に入れないように入り口にアマヤ(風除室)を設け、高ハッポウは積雪時の出入口としても利用した。屋根の棟にも特徴があり、三角形に組んだ千木(クラ)を乗せることから「グシグラ」と呼ばれる棟飾りが付いており、格調が高い。◆菅原家は、代々肝煎を勤めた有力農家で、その主屋は18世紀末頃の建築と推定されている。◆カブト造りといわれる均整のとれた美しい茅葺き屋根で、近代建築さえ及びも付かない素晴らしいフォルムである。

(3月22日号掲載)

◆総務省は『平成の合併』をまとめた。◆平成11年以来、財政支援措置等により全国的に行ってきた合併推進も10年が経過、現行合併特例法の期限である3月末までで一区切りとなる。 22年4月以降は、自主的に合併を選択する市町村に対して、合併の円滑化のために必要な特例措置を講ずる。◆我が国においては、これまで2回にわたり大合併が行われ、明治の大合併は、小学校や戸籍の事務処理を行うため、戸数300〜500戸を標準として進めた。その結果、明治21年に7万1314あった市町村が、明治22年には1万5859と大きく減少。 昭和の大合併は、中学校1校を効率的に設置管理していくため、人口規模8000人を標準として進めた。その結果、昭和28年に9868あった市町村が、昭和36年には3472と約3分の1。◆今回の平成合併推進の結果では、市町村数3232が1730。◆合併により面積が大きくなった市町村は、周辺部の旧市町村の活力が失われ、合併に伴い、旧市町村地域の伝統・文化、歴史的な地名などが失われてしまうという課題に直面している地域がある。 ◆まだまだ、問題は山積している。

(3月18日号掲載)

◆伊賀市の新庁舎建設をめぐる議論が混迷。日本を代表する建築家坂倉準三が設計した現庁舎の保存を求める声が上がり、解決の糸口は見いだせそうにない。◆伊賀上野城の麓に立つコンクリート打ち放しの現庁舎は、近代建築の巨匠ル・コルビュジエに師事した坂倉氏が設計を手がけ、上野公園周辺には、5つの公共建築が残る。昭和38年に3階建ての北庁舎、翌年に2階建ての南庁舎が完成した。南庁舎は敷地の高低差を活かし、2階部分を柱で持ち上げるようにして開放感を出したピロティなど、特徴的なデザインがふんだんに残る。しかし、築45年たち老朽化。耐震不足も判明し、改修か建て替えかを迫られている。西小校舎、崇広中校舎は取り壊された。日本建築家協会東海支部など県内外の4団体から保存要望も相次いでいる。◆伊賀市庁舎等は最も秀逸な作品の一つ。歴史性・文化性にすぐれた建築物の保存活用は、いまや全世界共通の命題となっており、一度失われてしまえば価値は取り戻せない。

(3月15日号掲載)

◆二口峠(宮城県道・山形県道62号仙台山寺線、二口林道45・4q)は山形と仙台を最短距離で結ぶ峠。◆しかし、最も人を寄せつけない峠でもある。◆山形城下の二口橋から落合を通る道を、風間追分で分岐、高瀬の高沢から清水峠を越えるルートと、山寺から山伏峠を越えるルート。◆この道を開削したのは、立石寺を開基した円仁と言われ、明治維新になると、三島通庸が、関山峠に新道を建設したため、急激に衰退した。◆一方、昭和56年に、仙台市、山形市、天童市の3市1町で整備促進期成同盟会を設立、仙台山寺線として整備できるよう要望しており、二口トンネル促進期成同盟会も設立した。◆しかし、県の調査でイヌワシやクマタカの生息が確認され、厳しい状況にある。◆仙台市と直結する最短な道路となれば、社会経済全般にわたり想像以上の波及効果がある。是非、夢のような大事業とはいえども、県の表玄関として、県内の動向を左右するほどの大事な路線として位置づけてほしいものだ。

(3月11日号掲載)

◆我が家の「ねこ」に買おうかどうしようか、ずいぶん迷ったんだが、骨身にこたえる年頃ですからホットカーペットを。夏にはクールシート。そのためかメタボの“太った猫”に◆一方、オバマ米大統領は、公的資金による救済を受けた銀行の一部が、幹部らの高額ボーナスを復活させる動きを見せていることについて「太った猫」の銀行員を助けるために選挙を戦ったわけじゃない│などと怒りをあらわに「ウォールストリートの人々は、まだ分かっていない」と批判した。◆また、閉幕したバンクーバーオリンピックで、金メダル3個という過去最低の成績に終わったロシアでは、メドベージェフ大統領は「バンクーバー五輪の責任者は、勇気ある決断をして辞表を書くべきだ。」と述べたうえで、「最も重要なのはスポーツ選手本人であり、太った猫のような連盟ではない」と、ロシアのオリンピック委員会などを批判した。◆日本でも納税者の助けの恩恵を受けた大企業も、のど元通れば知らんぷりでは中小企業は浮かばれない。◆ちなみに「太った猫」というのは英語のスラングで「金持ち」を指すらしい。

(3月8日号掲載)

◆日本の文化は木と紙に支えられてきた。障子を通るやわらかさで温かい光、障子の透き間から見える庭のたたずまいなどで、心のやすらぎを覚える。◆しかし、学校建築は小学校から大学まで殆ど全てが鉄筋コンクリート。子供たちが木や土に触れる機会は少ない。◆木造建築の寿命は長く、そしてまともな建築をすれば地震にも強い。世界最古の木造建造物は法隆寺、世界最大の木造建造物は奈良東大寺の大仏殿。これは日本が木の文化の国である事のあかし。◆時代と共にニーズも変わるが、どちらが上座か下座かといったこと等も疎かにされ、新しい生活文化が模索される中で住まい自身の文化が崩壊しつつある。◆モダニズム建築の流れの中で、事務所建築を中心に、あたかも文明の象徴であると主張しているような、他を威圧し圧倒するかのような鉄骨や鉄筋コンクリートの景観をつくりだしている。最近は、その行き詰まりを説く建築論もある。◆竹山清明氏は “大衆化したモダニズム建築”と表現している。

(3月1日号掲載)

◆環境保護活動やテレビ番組で朴訥とした栃木弁でも親しまれた作家の立松和平(本名横松和夫)さんが死去。62歳。お別れ会は3月27日青山葬儀所で開かれる予定。◆各地を旺盛に旅する行動派作家として知られ、活力あふれる描写とみずみずしい感性が多くの読者の共感を得ていた。近年、とくに自然環境保護問題に取りくみ、日本と世界を旅し、小説、エッセイ、紀行文、絵本など幅広い創作活動を続け、歌舞伎座上演「道元の月」の台本で第31回大谷竹次郎賞受賞。北海道では特に知床の自然と人に魅かれ、ログハウスを建て、知床を第二の故郷としていた。◆若かれし時は東京の大学に進んだが、訛りのコンプレックスに直面。学生運動にのめり込むが挫折。以後、放浪を繰り返し、肉体労働のバイトをしながら作家を目指し、さらに駆け落ち結婚、身重の妻を置いてのインド逃避行。一時は夢を断念し、故郷で市役所勤め。それからは故郷を舞台とした作品を次々と発表。テレビのリポーターをするなど一躍、スター作家となっていく。◆田原総一朗が企画、山下洋輔がバリケードの中でピアノを演奏したイベントを「今も時だ」として小説化。ボクシング、パリ・ダカールラリーなども体験している。

(3月1日号掲載)

◆日本の予算は、公共事業費が減少しているのに対し、社会保障費が増加し劇的に変化。10年前の公共事業費は約15兆円、社会保障関係費も約15兆円とほぼ同等。10年後の平成20年には社会保障関係費が50%増え約22兆円、公共事業関係費は51%ほど減って7兆円。安心社会から信頼社会へと変容した。◆一方、建設業の専門家の役割も大きく変わっている。今は、これがどうして必要か、世の中の役に立つのかを説明、信頼を得なければいけない。◆一昔前は、技術的なことは専門の会社に発注すれば、道路や河川の改修などは行えた。しかし、現在は、技術の進歩は著しく、技術が解っている公共技術者がいないと、市民の声に直ぐに答えられない。キチンと説明できる職員がいるというのは大きい。◆さらに、多くが総合評価落札方式で発注、多額の費用と労力を使って設計法や施工法の技術開発をして、技術提案書に書き、それを評価して点数付けして貰う訳だが、公共技術者は、世界の最先端技術を評価して行かなければならない。◆スキルアップすることが相互の信頼を醸成する。

(2月25日号掲載)

◆竹内昌義氏を含む東北芸工大の教授陣が中心となってまとめた「未来の住宅」の本が昨年8月に発売された。◆これからの住宅のスタンダードを提案しているもので、住宅が消費するエネルギーはイニシャルよりランニングを抑える。エネルギー負荷が大きいのは冬であるため「無暖房住宅」というのが目指すべきあり方。外壁の断熱・気密性能をあげる。アルゴン封入のトリプルペアガラスと木製サッシュを使えば大開口であるほど太陽熱を取り入れられるので良い。エコ機器は徐々にスペックアップしていけば良い\など具体的な基本方針が示されており明快。◆今後、低炭素社会に向けて、いやおうなく求められるエコな家づくりについて基本知識を与えてくれる。妹島和世氏の設計した《梅林の家》の施主も登場する。◆竹内氏は鎌倉出身で、東京工業大学修士終了、ワークステーション一級建築士事務所勤務し、竹内昌義アトリエを設立、みかんぐみを共同主宰、芸術工科大学デザイン工学部建築・環境デザイン学科教授。◆NHK長野放送会館の設計を機に、建築設計事務所「みかんぐみ」を共同設立。幅広い建築設計を手掛け、愛知万博ではトヨタグループ館、フランス・ドイツ共同館を設計し話題になった。

(2月22日号掲載)

◆近畿日本鉄道では、阿部野橋ターミナルビルの旧館部分を高さ300m(地上62階、塔屋1階、地下6階、延床面積約21万u)の超高層ビルに建て替えることになり、1月9日に着工、2014年3月竣工予定で進められている。完成すると、横浜ランドマークタワーを抜き、日本一の高さとなる。◆近鉄百貨店阿倍野本店は、増床により松坂屋名古屋本店を抜いて売場面積が日本で最大の百貨店となり、同時に日本初の売場面積10万u突破の世界最大級の百貨店となる。また、駅ビルとしては名古屋駅内のJRセントラルタワーズ抜いて世界一の駅ビルとなる。◆外観デザイン設計は、超高層建築に多くの実績を持つシーザー・ペリ氏に依頼。◆設計コンセプトは、百貨店、オフィス、ホテル、美術館、展望台等を立体的な造形に組み上げ、立体的屋上緑化を介して天王寺公園へとイメージをつなげることで、ダイナミックな都市活動拠点の創造と、人間と自然環境に優しい街づくりの両立を目指す。◆設計・監理は竹中工務店、施工は竹中工務店・奥村組・大林組・大日本土木・錢高組JV。

(2月18日号掲載)

◆マリンピア松島水族館の仙台移転計画で、仙台市は10億円を出資、移転を支援すると正式に表明。水族館は市が所有する高砂中央公園整備地(宮城野区)に建設され、24年3月にオープンする見通し。◆アウトレットモール、夢メッセみやぎなど大型商業施設の集積が進む仙台港エリアの集客拠点として期待が高まる。事業費は約83億円で、合同会社仙台水族館開発が事業主体。◆さらに、人気キャラクターのテーマパーク「仙台アンパンマンこどもミュージアム」(仮称)が23年春にも、JR仙台駅東口(宮城野区)の再開発地にオープンする見通し。◆予定地は宮城野区鉄砲町の仙台駅東第二土地区画整理事業地。各種キャラクターの展示施設と、関連商品の販売モールを設ける。事業費は約20億円。◆ミュージアムの第一号は19年4月に横浜市に、今年4月に三重県桑名市に開館、仙台に誕生すれば全国で3カ所目。◆体験型テーマパークは、アンパンマンの世界をジオラマ化した店舗や遊具、ショーで体験できるのが魅力。仙台市は、東北全体から年間40万人規模の集客を見込んでいる。◆いゃ〜、実に羨ましい。『買い物レジャーは仙台へ』が定番化、指を銜えて見ているだけでは。


(2月11・15日合併号掲載)

◆現在、日本で違法であるカジノを推進していく事は生易しい事ではないようだ。◆誘致に大きな力を注いでいる所を見ると、東京は完全に行政主導型、沖縄・宮崎は観光業団体主導型で動き、石川県珠洲市、秋田県雄和町(町の長期基本計画に盛り込まれた)は商工業者を中心に民間で協議会等推進団体を作って動いている。◆隣県の秋田県雄和町では、秋田空港近くの雄物川が蛇行する水田地帯に水路を設け、船でカジノやショッピングセンターを行き来する計画で、「イーストべガス構想」という調査報告書にまとめている。愛知県常滑市では、中部国際空港島対岸部(123f、前島カジノ構想)にカジノを誘致する計画。◆ラスベガスは、ダム建設で栄えた街の存続のため始めた。砂漠の中の街ゆえに、常に強大な競争力を持たないと生き残ることができず、その競争原理の基。◆行政主導型にしろ、民間団体主導型にしろ、そこに在住する住民を含んだ総意が無ければ政治は動かない。政治が動かなければ、カジノの合法化は難しい。今後のカジノ推進のためには “市民の理解と総意”がキイワードになると考えられる。

(2月8日号掲載)

◆昨年の山形市9月定例会で後藤誠一市議は、生活基盤としての雇用を生む新たな産業育成への取り組みについて質問した。◆後藤市議によると、小水力、マイクロ水力発電した電力を蓄積する「電池産業」こそ、山形の自然環境を生かした産業集積づくりに適している。これからの世界的な自動車産業は、さらなる高い蓄電量の電池の開発によって、その仕組みを変えていくことになる。当然、関連部品の需要も大きく様変わりしている。 山形市がこうした蓄電池の研究・開発に特化して、開発に取り組む企業を誘致、大きなインセンティブを与えて将来への一大投資をするべき。電池関連産業特化政策をとる絶好の時\と訴えた。◆市長は、蓄電池の研究機関あるいは会社、生産の工場の誘致は、現在、新しい産業団地の基本構想を現在の景気状況、あるいは将来展望も含めて、現在検討中。この蓄電池の集積あるいは誘致についても、その選択肢の1つと答弁している。◆「須川グリーンベルト構想」で蘇るか期待したい。

(2月4日号掲載)

◆名古屋グランパスは闘莉王や金崎とホットな代表クラスを補強。さすが名古屋は資金力が豊富。今年の名古屋は面白くなりそうです。◆名古屋と対照的にお金のないモンテディオ山形。しかし、頑張ってます。予算のないクラブですが鹿島のFW田代有三、MF増田誓志を獲得、素晴らしい。◆モンテのスタメンがある程度約束されているという事も選手にはメリット。特に田代は日本人離れした跳躍力で前線のターゲットで大いに期待できる選手。増田も攻撃的MFやサイドバックをこなす器用さがある。◆モンテは堅守速攻のチームだが田代、長谷川、古橋、増田と前線もかなり強力になってきた。中盤の守備が弱かったのに対し下村にとっても働き甲斐のあるチームに来た。◆適材適所の補強には恐れ入りました。限られた予算で最大級の補強に見える。理事やスカウト陣が非常にしっかりしていると言うことになる。金のないモンテが現在の地位にいられるのは、まさにフロントの力量。また鹿島ルートがあるのも強み。◆J1初出陣の昨季、15位に終わり、リーグ戦の総得点はワースト2位タイの32得点。今季は50点10位以内を目指す。開幕戦は3月6日アウェーで湘南。開幕ダッシュだ。

(2月1日号掲載)

◆ライトノベル?。「角川スニーカー文庫」「MF文庫J」「電撃文庫」「富士見ファンタジア文庫」などからでている挿絵つきの一連の著書を指し、その殆どが文庫本の形態で、比較的安価であることが挙げられる。読者層の変化や嗜好の細分化などから、より少ない発行部数でも採算の取りやすい新書(ノベルス)やハードカバーなどでの発売も増えている。読者の年齢層は、主として中高生を対象としているものの、その読者層は拡大、市場も拡大基調となている。◆ジャンル分けというのは、その著書だけを読んで分かるものでもないし、著書の傾向はもちろん、どの出版社の、どのジャンルから出版されたかも判断基準になるようである。◆今は、ライトノベルの中に、大衆文学系と、純文学系の2層化がおきていて、村上春樹や吉本ばななは、この純文学系ライトノベルではないか?と思うが。◆ライトノベル出身の桜庭一樹が直木賞など権威ある賞を受賞、今までの概念から大きく広がりを見せている。◆村上春樹は基本的に「純文学」と言うことになるのだろうか。ライトノベルというのは乱暴に聞こえるものなのだろうか。

(1月28日号掲載)

◆社会保険庁の後継組織として1日発足した「日本年金機構」は4日、通常業務をスタートさせた。社会保険事務所の名称は「年金事務所」に一新する。◆お客様へのお約束10箇条は、わかりやすい言葉で、ていねいに説明。 お客様にとってプラスとなる「もう一言」を心がけ、電話は3コール以内に出る。問い合わせには、迅速に、その場で答えできない場合は、速やかに確認、2日以内に確認の状況を連絡。お待たせ時間は30分以内。お客様への年金情報提供サービスを充実。情報はしっかり管理、細心の注意を払う\ など。約束について守れたかどうか、毎年の実績を報告するとしている。◆同機構は非公務員型の特殊法人。正職員約1万800人の大半は社保庁職員からの移行組だが、年金記録ののぞき見など過去に懲戒処分を受けた職員は採用されず、約500人が分限免職となった。◆不祥事にまみれた「社保庁の体質」だが、組織の「中身」が変わらなければ、年金制度への信頼回復は永遠に遠のいてしまう。緊張感を持って業務に臨んでもらいたい。

(1月21日号掲載)

◆ワンデーレスポンスは、これまでも監督職員個々において実施していた「現場を待たせない」「速やかに回答する」という対応をより組織的なものとし、工事現場において発生する諸問題に対し迅速な対応を実現するもので、基本は「即日対応」◆工事現場において、発注段階では予見不可能であった問題が発生した場合、対処に必要な発注者の意志決定に多くの時間を費やす場合があるため、実働工期が短くなり、工事等の品質が確保されないケースがあると指摘されている。そのため、発注者は「ワンデーレスポンス」の実施等、問題解決のための行動の迅速化を図る必要がある。◆公共工事の受注者、発注者に課せられた使命は「良いものを、早く、安全に、適正な価格で市民に提供すること」といえる。安全と品質を確保したうえで、受注者と発注者が協力して適切な工程管理をおこなうことにより、速やかに工事を完成させ、早期に供用開始をおこなうことでメリットが発生する。◆国交省の調査結果によると、「計画通り進んだ」または「計画より早く進んだ」と回答した請負者が約90%に達している。◆まだまだ普及に至っていないが、当たり前のことを行うことの難しさとは、何か?。三方倫しに向かって。

(1月21日号掲載)

◆今年7月19日(海の日)から10月31日まで105日間、瀬戸内海に浮ぶ7つの島と、その玄関口となる高松港周辺を舞台に「瀬戸内国際芸術祭」が開催される。総合ディレクターは北川フラム氏(女子美術大学教授)◆これは、アートを道しるべに、美しい島々を巡りながら、心癒す瀬戸内海の風景と、そこで育まれた島々の文化や人々の息づかいを体感できる現代アートの祭典。◆アートと海を巡る105日間は、直島に新たに大竹伸朗氏の銭湯がオープン、韓国のアーティスト、リー・ウーファン氏と安藤忠雄氏による新たな美術館が建設中。豊島では、内藤礼氏と西沢立衛氏のコラボよる棚田の中の水滴形の美術館が建設中だ。また、アートディレクター長谷川祐子氏と妹島和代氏の古民家再生を展開。◆一方、フランス人アーティスト、ボルタンスキー氏による世界の人々の心臓の音アーカイブを計画、男木島ではスペインのアーティスト、ジャウメ・プレンサ氏デザインによる交流施設の建設、女木島でも瀬戸内海の波、あるいは、光・風など自然に感応する作品をつくろうとしている。◆是非、行ってみたい。

(1月14・18日合併号掲載)

◆有機EL研究の第一人者である城戸淳二山大教授を中心に8年前、山形大学工学部で経済産業省の「高効率有機デバイス」プロジェクトが始まった。7年間で約48億円が投じられた有機エレクトロニクスに関する国家プロジェクト。◆県から、開発した技術を県内企業に移転して県内企業を活性化して欲しいとの申し出があり、有機エレクトロニクス研究所が設立。◆計画では、20年構想だが、第一フェーズ7年間、第二フェーズ5年間、第三フェーズ5年間と実際には17年構想となる。フェーズ1では、有機ELパネルの実用化技術の開発に主に取り組み、有機白色照明の実現を目指す。フェーズ2では、有機EL白色パネルの普及とともに他の有機デバイスの実用化技術の開発を推進し、企業誘致、ベンチャーの創出と産業を集積し、さらにフェーズ3では、他の有機デバイスの実用化も実現し、山形を有機半導体デバイスの研究開発拠点だけではなく産業の集積地へと導く。フェーズ3終了時には、100社の有機半導体関連企業を集積する。◆しかし、悲しいかな知事の二度の交代など、バレー構想の熱かった人達は居なくなり、研究所の存在が危うくなっている。このままでは、有能な人材が県外流出し、山形の有機ELが出遅れるのは時間の問題。◆と思っていたが、国の事業が復活した。安堵した関係者は多い。灯火を消してはならない。

(1月1日号掲載)

◆透明感・清潔感のある作品をつくらせたら最もすばらしい建築家、妹島和世さんが、第12回国際建築展の総合ディレクターに起用される。美術と建築の最先端を年ごとに交互に見せるイタリアのベネチア・ビエンナーレの最高責任者に日本人が就くのは初めてで、女性が選ばれるのも建築展では初めて。◆着任にあたって妹島さんは「空間の境界に始まり、様々な境界を考え直すことでソフトにしていくこと」を現代建築のなかに求める、と表明した。◆妹島さんは、茨城県生まれで、日本女子大学大学院修了、伊東豊雄建築設計事務所入所し、妹島和世建築設計事務所を設立。西沢立衛氏とSANAAを設立。現在、慶応義塾大学教授。◆ 妹島さんは、ガラスを多用した透明感や軽やかさにあふれる建築を得意とし、処女作の住宅PLATFORM (吉岡賞)はポスト・モダン的な形態。再春館製薬女子寮(K・F・ブラウン環太平洋地域文化建築賞)はダイアグラムを建築化、調布駅北口交番(商環境デザイン賞大賞)は平面のような立面。◆県内建築では、朝日新聞山形ビル(山形市六日町) がある。また、数年前に芸術工科大学で講演も行っており、世界中を飛び回る勝ち気なおばさんにエールを贈りたい。
(12月17日号掲載)

◆現代を代表する日本画家の平山郁夫さんが脳梗塞のため東京都内の病院で死去した。仏典を中国に持ち帰った玄奘(げんじょう)三蔵を描いた「仏教伝来」で一躍注目を集め、以来、平和を祈念し、仏教やシルクロードをテーマにした作品をライフワークにした。◆また、同氏は、人類共通の遺産である文化財を様々な危機から救い、次世代に継承するため『人はパンのみによって生きるにあらず、物だけでなく生きた人間も救わなくてはならない』と「文化財赤十字構想」を提唱した。◆文化財赤十字構想とは、戦場において主義主張の差別なく負傷者に救護を与えたいというアンリー・デュナンの願いから生まれた赤十字の人道博愛の理念と同じように、過去の国や民族、宗教が築いた遺産を全人類的な立場から救済していこうというもの。◆日本サムスンは、同氏の構想を人材育成面で支援する「サムスン・シルクロード文化財保護フェローシップ」を立ち上げ、中国での文化遺産保護に携わる専門家育成

(12月14日号掲載)

◆国土交通省は、質の高い建築物の整備に必要な目標や基本理念などを盛り込んだ「建築基本法案」(仮称)を早ければ2010年の通常国会に提出する方向で検討を進めている。◆建築史学者の鈴木博之教授によると、西欧に比べて日本の都市が美的でなく混乱と無秩序に満ちていると指摘されることが多いのは、我々の日常生活に永遠がなく、今しかないからだろうと述べている。◆「質の高い」建物とは、「長期にわたって機能を全うし、存在価値を維持し続けられる」デザインや計画がなされているか。\だそうだ◆日本と海外の建築物の違いでは、「目一杯容積を獲得する、その容積をできるだけ少ないイニシアル・コストで実現する」という経済第一主義的発想が、質の低い建築物を生む。\としている。◆建築物の質の向上に対して関係者が果たすべき役割では、教育の段階での、質の向上関連の重要性の教育が求められる。ウィトルウィウスのいう、Firmitasの概念を日本は理解しないできた。この言葉を「強度」と考え「耐久性」という概念を持てなかった。建築構造学が、強度計算、耐震設計中心に組み立てられてきたことの弊害は大きいのではないか。\としている。◆山形市立第一小学校校舎建物調査報告書の監著は同氏のもの。

(12月10日号掲載)

◆日本も出場する来年のワールドカップ南アフリカ大会の切符をかけた大一番、フランス対アイルランド戦。フランス主将のアンリ選手がハンドの反則を犯し、それが決勝点に結びついて勝負が決まった。審判はハンドに気づかなかった◆アイルランド協会は、FIFAに再試合の開催を要求。怒りは、アハーン司法相までが「このままでは、ズルをすれば勝てるという価値観が根付いてしまう」と非難。渦中のアンリは「ああいった形でW杯出場を決めたことに恥ずかしさを感じている」と懺悔した。◆メキシコ大会の準々決勝でアルゼンチンがイングランドを敗退に追い込んだ「神の手」ゴールのマラドーナ(現監督)が有名である。◆サッカーの審判、特に主審の仕事は大変。90分間の試合では選手とほぼ同じ13キロも走るという。主審は最終決定者である。だが審判も人間であり、ミスをする。◆道具をほとんど使わず、単純なルールで戦うサッカーは人間くさいスポーツ。人間だからミスを犯し、逆に人間離れしたプレーが人を魅了もする。サッカーは試合そのものが、ミスと挽回の繰り返しといえる。

(12月7日号掲載)

▼喫煙率が低下している。平成20年の調査では、日本人の喫煙率は21・8%で年々減少。男性の喫煙率は36・8%で、40歳代がもっとも高く51・9%。女性の喫煙率は9・1%で、20歳代が14・3%、30歳代が18・0%と若年層で高い値。男性に比べ、平成元年より9〜12%の間を上下しながら漸増。▼喫煙が非喫煙者に不快感を与えるという認識が定着しつつあり、少なくとも不特定多数の人々が利用する「公共の場は禁煙とすべきである」という意識が高まってきている。▼一方、平成10年のたばこ特別税創設、15年及び18年のたばこ税増税と、たばこは過去10年間で3度も増税。税負担率が今や6割を超えるわが国でもっとも税負担の重い商品。▼たばこという特定の商品に対してのみ、さらなる負担を強いることは、不公平そのもの。ルールを守らない“百害あって一利なし”とし拍手する非喫煙者も多いが、間違いなく大衆増税だ。▼喫煙家にとって、鳩山政権が検討するたばこ増税のハードルをどう乗り越えるかが正念場だ。▼筆者は喫煙家であり、喫煙という「ささやかな自由」の機会が閉ざされようとしている。もし、五百円に値上げされたら、家計と相談しなくては。

(12月3日号掲載)

◆山形市6月議会の中で、山形駅西口にサッカースタジアム建設を進めてはと、菊地健太郎議員が一般質問している。◆提言しているのは、1万9300人収容のスタジアム建設は可能。モンテディオ山形の経済波及効果は、スタジアムが駅の西口にあればそれ以上の効果。4年前にできた千葉のフクダ電子アリーナなどを参考に試算すると、65億円程度で建設することができる。県民会館建設費は280億円、そこに満席状態で人が集ったとしても2千数百名。モンテディオ山形の集客だけを考えても、その費用対効果は歴然。西口へのサッカースタジアム建設以上の中心市街地活性化策はあるのか。\などの理由。◆市川山形市長は、これは建設費、建築費のみでなくて、これは県有地。県有地を確保するという費用も含めて100億円を超えると予測。また必置義務じゃないが、サブグラウンドの問題も浮上してくる。現時点で、市としては整備は無理である事に変わりはない。◆市長の答弁は一考の余地もない。やはり無難な選択なのだろう。

(11月23日号掲載)

◆厚生労働省は、国民の経済格差を表す指標である「相対的貧困率」を初めて発表。平成19年は15・7%で、7人に1人が貧困状態という結果。算出を行った10年以降で最悪となった。18歳未満の子供が低所得家庭で育てられている割合「子供の貧困率」は14・2%。◆経済協力開発機構(OECD)が昨年に公表した加盟30カ国の比較では、日本は4番目に悪い。◆相対的貧困率は、一家の収入から税金やローンなどを除いた自由に使える「可処分所得」を1人当たりに換算、高い人から順に並べた場合の中央値の半分に満たない人の割合を出したもの。◆最悪の水準となった19年は、年間所得の中央値が228万円で、相対的貧困率の対象となるのは所得が114万円未満の人。この比率が15・7%を占めた。◆日本は、かつての調査では北欧諸国並みの水準で、「一億総中流」と言われたが、近年、貧富格差が拡大。定義をちょっと考えてみれば、この値は貧困を量る値ではなく、所得格差を量る値。◆国連や世界銀行の定義によると、(絶対的)貧困層とは、「1日1ドル以下で生活している層」。これは、我々の目から見ても、貧困だ。

(11月19日号掲載)

◆個社別はともかく、建設業界は永く自民党を支持してきた。それは自民党が政権与党であったからに他ならない。それが8月30日の総選挙において、与野党が逆転してしまった。16年前の細川連立政権時にも自民党は下野したものの、あの手この手で政権与党に返り咲いた◆しかし、今回は前回と状況が異なる。同じ連立とは言え、核となる民主党が衆議院は過半数を制し、参議院も過半数に届こうという議席数を有する。政変でも起こらない限り、自民党の政権奪取は次の総選挙までない◆建設業界は、自民党から公認を受け、参議院比例代表で業界代表を送り出している。来夏の参議院議員選挙では、脇雅史議員が改選を迎える。野党転落後の選挙だけに、同氏の危機感は強い◆建設業界も各種法制度で縛られているだけに、政治とは切っても切れない関係にある。万年与党時代と変わった今、自民党を支持してきた団体は今後、政治とどう向き合うのか、難しい選択を迫られている。◆民主党の仕分け作業は佳境に入り業界にとって厳しい結果に。

(11月16日号掲載)

◆この秋、山崎豊子作品の映像化が目白押し。 テレビドラマの「不毛地帯」、映画「沈まぬ太陽」の公開。 「不毛地帯」の主演は唐沢寿明。「沈まぬ太陽」は渡辺謙。どちらも引けをとらない。NHKのドラマの「大地の子」は毎週楽しみに見ていた。◆山崎豊子作品は、「沈まぬ太陽」ですっかりファンになり、アフリカ篇・上・下、御巣鷹山篇、会長室篇・上・下を貪るように読んだ記憶がある。巨大な航空会社で時代と組織に弄ばれた主人公の苛酷な左遷。家族との離別、孤独を支えたアフリカの大地。御巣鷹山に墜落したジャンボ機。事故後、新会長・国見は恩地を会長室部長に抜擢。新たなる苦闘の始まり。 恩地を待ち受けていたのは\というストーリー。◆この長編を、3時間22分の映画にまとめるのは、至難の業で、小説と比べると、物足りなさも。この映画は「文字を超えられない」のでは。しかし、この時期の公開はタイムリー。◆山崎豊子の座右の銘は、ゲーテの言葉で「金銭を失うこと。それはまた働いて蓄えればよい。名誉を失うこと。名誉を挽回すれば、世の人は見直してくれるであろう。勇気を失うこと。それはこの世に生まれてこなかった方がよかったであろう」。

(11月12日号掲載)

◆ある社長と雑談した。丹下健三氏の代々木体育館は特徴的な高張力による吊り構造で、最高傑作ですね。と話しかけたが、ゼネコン出身の社長は「芸術性の高いのは、東京カテドラル聖マリア大聖堂。建物全体が十字架を描き、HPシェルの双曲放物線が美しい。代表作であり、この建物が世界の丹下になった。」と。◆懐は寂しかったが金曜の深夜バスで一路東京へ出かけた。東京メトロの江戸川橋駅から徒歩で歩くと、住所もビルの名前も、会社の名前の頭にも関口が付いている、坂の多い不思議な場所。目白通りに出て、椿山荘が見えて、向かいにあった。◆外観は8枚のHPシェルで作られていて、教会用としては日本最大のパイプオルガンなどがあり、天井部分のトップライトは十字架を描く形に。内部は洗練され、静かで広々としている。独特の空間。実に美しい。◆また、自由学園明日館はアメリカが生んだ巨匠フランク・ロイド・ライトの設計。国立西洋美術館は、国内で唯一のル・コルビュジエの設計で近代建築の三大巨匠のうち二人も関係。伊東忠太氏の築地本願寺も見応えがある。

(11月9日号掲載)

◆長野大の大野晃教授が1991年に名付けた「限界集落」。65歳以上の高齢者が集落人口の50%を超し、共同体の機能維持が困難になり、消滅寸前となっている集落の事。◆限界集落は約7900あり、うち422は10年以内に消滅する恐れがあるという。集落が消えると山が荒廃、下流では洪水が多くなり、泥が流れ込む海では磯焼けが起きる。棚田の美しい風景が消え、その地の食文化や伝統文化も途切れる。◆国立人口問題研究所調べの山形県の限界集落の現状(H19年5月推計)をみると、集落数1205集落、10年以内に消滅5集落、いずれ消滅34集落、限界集落57集落。◆県の人口は、今後大きく減少することが予想され、30年後には現在より約25%減少、更に高齢化率も増加が続き、10年後には30%を超過すると予想。◆しかし、民俗学者の結城登美雄(山形県出身)さんは、小さな村こそが人間らしく生きるためのこれからの希望の場所なのではないかと訴え、都会の若者たちとの出会いから「限界集落」が希望の村に生まれ変わった具体例を示している。真の桃源郷へ。

(11月5日号掲載)

◆政権交代の持つ意味がじわりじわりと分かりつつある。今年度一次補正の見直し・削減、来年度公共事業費の大幅削減等々、建設業界に大きな影響を与える事柄も次から次へと打ち出されている。「これが政権交代」と言ってしまえばそれまでなのだが、本県に与える影響が不透明なだけに、安穏としていられない◆公共事業費の総枠が二ケタ台削減されれば、県内事業への影響も避けられないと思われる。特に、未着工の事業がどうなるのか懸念される。これまでの政権とは一線を画すだけに、どのような判断基準で物事が決定されるのか、現段階で分からない◆行政機関が用いる費用対効果分析(B/C)は、数値化できるものが大前提。数字に表しにくい効果は無視されてしまう。自然、道路では交通量の少ない路線は不利となる◆民主党は、その費用対効果をより厳密にする方針を示している。そうなると、より地域間格差が拡大し、地域によって高いサービスの恩恵を受ける者と受けざる者によりはっきり区分されてしまう懸念が強い。そうならない血の通った政治・行政を強く望む。

(11月2日号掲載)

◆今、リニアモーターカーの熱い論議が展開されている。JR東海が2025年の開業を目標に計画を進めているリニア新幹線について、首都圏から中京圏の最短ルートは路線長が286q、所要時間は最速40分であることが明らかになった。想定されている3ルートのうち、建設費が最も低く所要時間も最速の南アルプス経由(Cルート)を前提。これに対し長野県は、経済効果の見込める諏訪・伊那谷経由(Bルート)を強く求めている。◆一方、神奈川県は、「成田〜羽田超高速鉄道整備構想検討調査報告書」を公開した。この構想によると、リニアモーターカーが成田空港から千葉市と東京湾臨海部を経由して羽田空港に至る80qを、平均時速300q、所要時間15分で走行する。横浜、新宿、さいたま新都心などへの延伸も視野に入れている。◆背景には、日本の地方空港からは韓国の仁川国際空港への便が就航。奪われつつある空の覇権を取り戻す切り札として期待されている。◆降ってわいたように出てきた成田・羽田リニアの壮大な構想。政治家が有権者に実現を訴えるなど、話が盛り上がっている。

(10月29日号掲載)

◆樺ゥ日相扶製作所(代表取締役社長・阿部佳孝氏、朝日町大字宮宿)は、イス、テーブル、ソファー、ベッドなどを製造しており、家具メーカーが家具メーカーに売っている。作ってるのは5万円のイスとか、30万円のソファとかイタリア高級ブランドなど高級品。都会の若者も憧れる高級家具が朝日町で作られてる。100%がOEMで、表面には出ない黒子役に徹している。◆世界的に有名な建築家フィン・ユールの家具を製作・販売しているデンマークのOne Collection社から継続的な受注も手がけている。フィン・ユールは王立美術大学建築科でカイ・フィスカーに学び、数々の名作を設計。ディテールの美しさで別名「家具の彫刻家」と言われている北欧の巨匠。◆朝日相扶本社工場は、積層合板イスから無垢の木の椅子迄、何でもこなす。日本で今一番注目されている家具会社となった。◆この会社の強みは、3次元のNC。業界では初の取組みだったという。また、塗装に関しては、プロが一つ一つ行っている。◆でも、ホンモノの技術力があれば、ほしいですよねオリジナルブランド?

(10月26日号掲載)

◆行政刷新会議の事務局長に、「構想日本」の加藤秀樹氏を起用した。◆構想日本は、「民」の立場から政策をつくり世の中を変えていこうというもの。構想日本の代表を務める同氏は、大蔵省入省後、ケンブリッジ大学留学、在エジプト大使館勤務、在イギリス大使館勤務等を経て、公正取引委員会官房企画室長、大蔵省証券局投資管理室長、財政金融研究所研究部長、大蔵省官房企画官を歴任後、職を辞し、 思いを共有する仲間とともに1997年4月設立した。◆また、東京財団会長兼理事長、四国民家博物館理事長、東京大学公共政策大学院実務家教員。その他、全国で選挙の際の公開討論会を進めるNGOリンカーン・フォーラム代表などを兼任。◆行政刷新会議として、「事業仕分け」の手法を使ってマニフェスト実現に必要な財源を捻出することになり、行革や地方分権につながる仕事を遂行することになるが、事務局長職は非常勤であり、構想日本代表としての活動も従来通り続けて行くとしている。果たして、この激務に二足、三足のわらじは必要なのだろうか。

(10月22日号掲載)

◆昨今、われわれが住む現代のストレスの多い社会で、何を持って“しあわせ”とするのかが問われ、「国民総幸福量(GNH)」の考え方は、非常に参考になる。◆イギリスが178ヶ国を対象に行った幸福量調査では、ブータンは世界で8位、アジア内では1位となっている。因みに日本は世界で90位。アジア圏だけで見ても、日本よりもフィリピン、中国、モンゴル、インドネシアの方が高順位となっている。◆「GNP(国民総生産)」より大事なのは「GNH(グロス・ナショナル・ハッピネス)」と言ったのは、ヒマラヤの人口約66万人足らずの小さな国ブータンの王様。国民総幸福量とはブータンの開発政策の根幹をなす概念、概念とは《目的と手段を混同してはいけない。経済成長自体が国家の目標であってはならない。目標はただひとつ、国民の幸せに尽きる。経済成長は幸せを求めるために必要な数多い手段のうちのひとつでしかない。そして、富の増加が幸福に直接つながると考えるのは間違いである。》。◆多くの発展途上国では急激な近代化のために、それにあわせて人口が都市へ集中、貧富の差も拡大し、悪循環がつづき、環境も荒廃するといったことがおこっている。

(10月19日号掲載)

◆日本農業の衰退が止まらないのは、何故か。農業衰退を招いた元凶は、補助金と減反政策に象徴される政治だけでは無い。戦後の高度経済成長に伴う、農から工へ、そしてソフトへ移行、今日の農業の衰退を加速。◆今や国民の3%に満たない農家が日本の食料の大半を支えている。かつて自給自足が当たり前だった日本人は消費者ばかりの国になってしまった。◆財源を使って手厚い生活保証をして、安心して競争できる環境を整える。これは、英国や北欧の経済の成功に学ぶやり方。また、スイスやドイツのように、環境保全のために補助金を農家に出す事も重要。◆一方、セブンアンドアイホールディングス、イオンなどの農業参入が相次いでいる。農家との摩擦は聞こえてこないが、期待の高い地域活性化、耕作放棄地解消などの起爆剤となるのか、注目が集まる。◆農業が果たす役割は、食の供給ばかりではなく、景観の癒し効果、水源の涵養など環境保全も担っている。水田は日本では農地であるとともに、国土保全の手段、その価値は年間約8兆円とも試算されている。その点、山形県は優秀である。

(10月12・15日合併号掲載)

◆船室を不動産のように販売する世界初の洋上マンション船「ザ・ワールド号」が9月26日、神戸港に入港。同じ港に二度と寄港しないルールだが、神戸港は2度目。◆2002年に建造されたバハマ船籍で、ノルウェーのレジデンシー社が運航。船室の分譲価格は8000万〜7億3000万円で、全198室の80%以上がバルコニーを備えている。中でも客室のインテリアは世界的な有名デザイナーとデザイン事務所によるもの。平均350人の乗客に対し250人のスタッフが手厚いサービスを提供する。◆メインレストランの他、ナイトクラブやカジノ、シネマなど、夜のエンターテイメントまで。さらには、高水準のフィットネスマシーンを備えたジムやスパ、プール、パッティンググリーンなど、数々のスポーツやレクリエーション施設も充実。 ゴルフの究極打ちっ放しは、なんと海に向かって。ザ・ワールドでは「エコ・ボール」と言って、約96時間で海中に溶ける特別なボールを使っている。◆世界的なイベントやその土地ならではの祭事にも照準を合わせ、世界の歴史的、文化的都市など40カ国、140の港を訪ねる。◆羨ましい限り。でも、船酔いには注意したい。

(10月8日号掲載)

◆全国知事会など地方6団体の代表は、9月始めに、民主党の鳩山由紀夫氏、菅直人氏と会談、国と地方の協議の早期開始について要請。◆会談では、地方は補正予算を執行、民主党の政策が地方行政や国民生活に与える影響が大きいとし、法律に基づく協議の場の設置に先立ち、速やかに国と地方の協議を開始するよう要請。また、後期高齢者医療制度や自動車関連諸税の暫定税率が即時に廃止された場合、地方は大きな混乱に陥るとし、事前に地方と協議を行い、双方が納得したかたちで実施していくことを要請した。◆さらに、全国知事会は、民主党が衆院選マニフェストで法制化すると定めた「国と地方の協議の場」について、知事会としての独自案を作成する方針を決めた。◆鳩山政権は、8月末に各省庁が出した概算要求をゼロベースで見直し、基本方針決定を受け、予算編成作業が閣議で決定し本格始動。◆めまぐるしく変わる政治、経済、金融、そしてものの考え方と個人の価値観、どれ一つをとっても、今までの既成概念では対応しきれない。

(10月5日号掲載)

◆松下政経塾は、松下幸之助氏が私財70億を投じ設立。今年で創立30周年を迎え、塾を巣立っていった卒塾生は200名を越えた。◆国土交通大臣の前原誠司氏は、京大法学部卒後に入塾、第8期生。その後、28歳で京都府議会議員選挙で当選。衆議院選挙で当選し国政に転身。日本新党、民主の風、新党さきがけを経て民主党入り。民主党では、新しい公共事業のあり方調査会会長、高速道路プロジェクトチーム座長などを歴任。趣味はSLの写真撮影など。◆同氏の「直球勝負」で、何を変えるのかのポイントは@国の財源・権限をできるだけ地方に移譲する「地方主権化」A天下り、公益法人、特別会計といった「官の既得権益」にメスを入れるB 公共事業の見直し│を挙げている。◆国の公共事業関係費は、構造改革路線の小泉政権以降に削減、しかしこの2年は景気対策の補正予算で公共事業の総額が上昇。新政権では、その流れが再び反転するとみられ、景気が冷え込んでいる影響から、特に公共事業に頼るところの多い地方の業者にとっては、公共事業の削減がそのまま死活問題につながってくる。果たして民意なのか。

(10月1日号掲載)

◆猫好きの家族と一緒に、猫の島として知られている田代島に。石巻港から網地島ラインのフェリーに乗って約40分。食堂なし、学校無し 、金融機関なし、ガソリンスタンド無し、商店と雑貨店が2店と自動販売機が数台。旅行者には不便のオンパレード。しかし、此所がよい。漁港からつづら折りの小道をダラダラと上っていくと、あっちからチラ、こっちからチラと猫が顔を出す。至る所にシャッターチャンスがあり、海と山の風景に癒され、猫に癒される。残念なのは、カラスが子猫の目をつつき、病んでいる事。◆島のほぼ中央に猫神社があり、島の漁師にとって大漁の守護神である「猫神様」が祀られている。そのため、猫が大事にされ、島内で自然繁殖し、島民より多い。また、「マンガアイランド」が設置され、「ひょっこりひょうたん島」のモデルとも。◆詩人の長田弘氏は「猫と暮らしています。飼っているのではなく、いっしょに暮らしています。私にとっての猫は、いわば、物言わぬ哲学者のような存在であって、優れて耳澄ますことに秀でた日々の対話の相手です。」と言っている。

(9月24・28日合併号掲載)

◆今日の世界には、地域経済の疲弊、貧困、環境破壊、子育てと仕事の両立など、政治や行政だけでは解決できない社会問題が数多く放置されている。◆そこで、最近“社会起業家”が注目されるようになってきた。社会問題の解決のためにビジネスの手法を利用し、様々な社会問題の早期解決に努めている。公的な機関には頼らず、自らの手で解決すべく、新しい仕組みを生み出そうとしている人たちだ。ビジネス起業家は、儲けと自分にどの程度報酬があったかで、その実績を計るのに対し、社会起業家は、社会にどれだけの強い効果を与えたかを成功したかどうかの尺度にしている。◆社会起業家は、課題への取り組みをビジネスとして行うという位置付けで、社会的に意義のある商品やサービスを提供。また、社会的な意義が最優先されることで、一般企業が通常の経済活動の傍ら行う社会貢献活動ともあきらかに違う。投資家や株主にとっては社会の課題が解決・改善されることでの満足感が “精神的な報酬”となる。◆まさに、世界から弱者が無くなり、社会問題が解決する、経済改革であるが。

(9月21日号掲載)

◆公共工事品確法が施行されて以降、総合評価方式の入札が急拡大し、地方自治体などの入札への導入も進展。直轄工事では、最低価格者以外の応札者が落札する割合が増えており、価格と技術による競争は定着してきたといえる。しかし、実績が増えていくにつれて見えてきた課題も少なくない。◆受注者側は、技術提案内容の予定価格への反映や、評価結果の公表方法、技術提案に対する費用負担、受注機会の偏り、評価結果のばらつきなど、評価や費用などに対する問題なども目立つ。◆技術提案では、項目数を規定するようになってきたが、高速道路会社や鉄道会社が発注する工事では、項目数が規定されていないことがあり、この場合、技術提案の項目数が多ければ多いほど評価が高く、提案項目をたくさん考えなければならない技術者の負担は大きい。作成する書類量が膨大で、技術開発費も必要だ。\との話も◆一方、評価項目に関する受注者側の要望では、「手持ち工事量」や「関連分野の技術開発実績」「イメージアップ表彰」は評価対象にするべきではないとの意見が多い。

(9月17日号掲載)

◆国宝の薬師寺東塔は、高さ約34bの三重塔で、各層に飾り屋根「裳階(もこし)」が付属、大小の屋根の重なりが律動的な美しさをかもし、仏塔建築としては他に類例のない意匠を示し、同寺で唯一、奈良時代の創建当初の建築。「凍れる音楽」という愛称で親しまれている。◆しかし、心柱の内部が腐食、周囲の柱を支える礎石も沈下していることが分かり、倒壊の危険もあり、解体修理を決定。来年の平城遷都1300年祭では作業を中断するが、11年度に本格的な解体工事に取りかかり、19年3月完成を目指す予定。部材の年代調査などによる塔のルーツ論争の決着など学術的成果が期待されるほか、工事現場の公開も模索され、10年近くに及ぶ見込みの歴史的大事業はさまざまな面で注目を浴びそうだ。◆「凍れる音楽」の有名な台詞は、フェノロサとする説など様々な説がある。裳階のお陰で、強弱が繰り返される一種の造形上のリズムが生まれ、「凍れる音楽」と評したのだと思うが、実に上手い喩えをしたものである。図面が読めて建築空間を体験するのと楽譜が読めて演奏を聴くのでは楽しめる量が異なるのも共通項では。

(9月14日号掲載)

◆子供、親、部下達に、頑張れ、頑張れと人生の応援歌みたいに連呼する。子供は運動会でビリに、成績が下がったかもしれない。また、親は病に。さらに、部下は営業は上手くいかないかもしれない。しかし、それぞれ一生懸命努力しての結果だとしたら。◆言われた本人は、これ以上どう頑張ればいいの。重い言葉となり、肩の荷が嵩むとしたら。優しい言葉でも、時には凶器になる。一方、人は、以外と、頑張っていない人には言わないものの様に思う。◆今、正に100年に一度の経済不況で、公共事業は「悪玉」の様に扱われ、建設業界では、総合評価のもと、朝早くから、やれ地域貢献、ボランティアだと次から次と指令が入り、汗が迸る。当たり前のことだが、無償奉仕である。また、施工計画では何日も時間、経費を要し研究する。落札すれば賄えるが。落札できなければ、経費も時間も消えてしまう。余裕、ゆとりは消えていく。何故、建設業界だけと関係者は嘆く。◆もう、頑張らなくていいから\と伝えたいのだが・・・・。

(9月10日号掲載)

◆総務省は、国家公務員の給与改定に関する取扱いを人事院勧告通りに行うとともに、給与の構造改革を継続推進することを閣議決定したことを受け、地方公務員の給与改定についても、国同様、民間給与などの状況を勘案して、適切に対処するよう通知した。◆人事院勧告とは、人事院が、民間企業に勤める労働者と一般職の国家公務員の給与水準を比較検討して、双方の給与水準の格差をなくすことを目標に、給与の改定を内閣と国会に提出(勧告)することをいう。ちなみに、民間企業平均年収は、公務員の二分の一。◆地方自治体が財政の窮地に追い込まれた要因は、様々あると思うが、主流となっているのが現行の人事制度。このままでは、人員削減で職員減による市民サービスの大幅低下、財政再建団体になるまで解決ができないところが続出する可能性が。◆長年官僚政治が続いてきた為に官僚のお手盛りで、国内民間企業と比較しても、欧米各国の公務員と比較しても、異常なほど高額に膨れ上がっている公務員給与のゼロベースでの見直しこそ、本来行うべき政策課題なのか−。

(9月7日号掲載)

◆県が開発した米の新品種「つや姫」が先行販売されるのを前に、米袋のデザインが決定した。選定するに当たり今年5月、企画コンペを開き委託先を決定。首都圏の主婦対象に調査を行った。米袋は和紙を模した白い半透明の袋で、中央には米印「※」の様なマークが大きく描かれ、緑色の三角形が山形の大地、赤い丸は朝日を表現。高級品種を目指しているのにひと目で高級感が伝わってこない−といった異論も出たが、最終的には全会一致で決定した。日本一のブランド米を目指し10月10日から県内で、翌11日からは首都圏など県外で先行販売が始まる。◆デザインは、一般的にモノの「色や形」のアレンジメントと受け止められているが、元々の意味は「計画」。最近では、地域デザインや景観デザインと言った様に、いろんな場面で言葉が用いられるようになってきている。◆山形県のものづくり企業は、俗に「技術は高いが売るのが下手」と言われるように、販売力の弱さは大きな課題。技術力・販売力・デザイン力が揃って初めて市場から認められる。

(9月3日号掲載)

◆東京に上京したときには、夜の東京タワーと対面するのが楽しみだ。◆今、東武鉄道と東武タワースカイツリーが、高さ約610mの東京スカイツリーの建設を進めている。もっとも太い柱の鉄骨が8月7日に高さ100mを超えた。年内には高さ200mまで達するという。2012年春の開業を予定している。◆長寿命建築を目指し、日本独自の建築技術の代表とも言える五重塔構造で制振システムを最新の技術で再現しようとするもの。タワーの水平方向の断面は地面真上では正三角形、高くなるほど丸みをおびた三角形となり地上約320mで円となる。概観は反りの美的要素も盛り込まれている。カラーデザインは日本伝統の藍白をベースにした「スカイツリーホワイト」。なおエレベーターシャフトはグレーで、展望台はメタリック色、頂部は鮮やかな白◆基本設計は日建設計が担当し、施工は大林組。監修は、そりのあるかたちシリーズで知られる作家澄川喜一氏と、東京オリンピックデザイナー総監督をも務めることとなった安藤忠雄氏。◆東京スカイツリーが電波塔の役目を果たすことになるが、東京タワーの黄昏は目にしたくない。

(8月31日号掲載)

◆民放の朝のラジオ放送で、月尾嘉男氏(東京大学名誉教授)が面白いお話をされていた。日本の会社の総資産額上位100社について調べると、ひとつの会社が上位100社に入っている期間は平均するとおよそ30年。何とアメリカでも同じ30年。◆現存する会社のうち世界で最も古いといわれているのが日本にある木造組み上げ工法の「金剛組」。金剛組は578年の飛鳥時代、日本最古の仏教寺院といわれる四天王寺を建設するため、聖徳太子が朝鮮半島の百済から3人の宮大工を招へい、そのうちの一人である金剛重光が創業。2006年、高松建設が出資した「新・金剛組」へ移行。また、鹿島建設や清水建設も江戸時代の創業。◆さらに、企業永続の秘訣は、古くから「家訓」という経営哲学があり、そこには現代の企業が見習うべき精神がたくさんあるという。その第一は「顧客本位」。「金剛組」には、第32代八郎喜定が記した「職家心得之事」という遺戒の中で、最も重要なこととして「諸事万端取引致しくれ御衆中へは、無私正直に面談致す可き候事」と伝わっている。

(8月27日号掲載)

◇民法で「20歳」と定める成人年齢の引き下げを検討していた法制審議会の「民法成年年齢部会」が先月末に、「成年年齢を18歳に引き下げるのが適当」とする最終報告書をまとめた。社会への参加時期を早めることで「大人」の 自覚を高めることが狙いで、契約年齢も下がり、自ら働いて得た金銭などを自分の判断で使える│などと指摘。選挙年齢が引き下げられ、成人年齢も一致させることで政治に参加しているという意識を責任感をもって実感できる│としている。◆さて、マナーがいい人、品位ある行動をする人など、自分の行動に責任が取れる人が「大人」。この定義も捉えどころのない枠組みかもしれない。◆フリーター、ニート、引きこもりなど、若者がいつまでたっても「大人」になりきれないで、「30歳成人説」などもあり、成熟するのが遅くなっている│と指摘する人も。◆かつて、大人になると元服、家督を継ぐなど、はっきりとした目安に基づく「資格」があった。世の中の仕組みが変わったために、こうした目安がなしくずしになっていったのが現在なのか。

(8月24日号掲載)

◇自然豊かで、情緒溢れる街並みの山形は、映画のような舞台がいろんな所にあり、映画のロケ地を観光で訪れる人もいて、注目を浴びている。地域にとって、ロケを誘致することは、地域が全国に映しだされ、撮影された場所やロケセットが新たに観光地化されるなど間接的な経済効果も生まれている。◇現在上映されている新田次郎著の「劒岳・点の記」は、大石田町生まれの柴崎芳太郎氏が主人公。越中剱岳一帯の三等三角網完成を命じられ、「地獄の針の山」といわれた剱岳登頂に成功し、山頂で修験者が遺したと考えられる錫杖の頭と鉄剣を発見した。◇過去には花のお江戸の釣りバカ日誌、藤沢周平小説「たそがれ清兵衛」等。また、芥川賞作家村田喜代子の小説「蕨野行」、若者のコメづくりと命がテーマのおにぎり、女子高生がジャズに惹かれていく姿を描くスウィングガールズ、石倉オープンセットのSUKIYAKI・WESTERN・DJANGO 、そして滝田洋二郎監督のおくりびと。竹中直人監督の山形スクリームと続き、三池崇史監督作品の十三人の刺客が撮影されている。

(8月20日号掲載)

◇ある経済学者は、費用便益分析により、本当に必要な事業のみを厳選して行う。便益を最大化するためには、まず、限界生産力の高い首都圏において優先して社会資本整備を実施すべき。極度に公平性を重視すれば、政治的ゆがみにより無駄な公共事業が行われる可能性が極めて高い。と述べている。◇B/Cの費用対効果は、事業を実施することが社会的に必要かどうか、どの程度支出することが望ましいか、などの判断材料として用いられる指標。公共事業などで投資の結果が得られる効果の程度を算定、事業に要する費用と比較して1を超えるときは事業効果があるという。逆に1以下では採択されない。◇本県のように、道路網の整備拡充が不十分なために、緊急医療体制、地域間交流、企業誘致に差し障りを生じてしまっている地域など、冷静に精査すれば、地域から国全体の経済発展へと通じ得るものや、少なくとも、甚だしい地域間の経済格差の解消へと通じ得るものは一定以上ある筈。そういったものへ対しての費用対効果の試算は、貨幣換算や物理的データでは補うことができない。◇費用対効果分析は、経済的効率性の観点からの評価には有用であるため、事業実施の主な判断材料の1つとして活用しているが、国際化への対応、国土保全・国土の均衡ある発展などの定量化が困難な指標の取り扱いについて、もう一度検討する余地が。

(8月10日号掲載)

◇梅雨明け宣言はまだ出ていない。湿気が多く枝を落としただけで汗がべとつく。数日前、友人を見舞うため、先輩のナビ付き車で神栖市まで出かけた。太平洋の空は広く陽もまた高く輝いていた。太陽の光がなかったなら、地上の生物は悉く存し得ない◇あの「皆既日食」の日には、免許証書き換え講習の日であった。受講を終え、広い駐車場に戻って来ると、二人の若い女性受講者が空を眺めていた。と思ったら、大きな声で「見えるよ、見えるよー」と叫び続ける◇薄いベールに被われたような太陽が、雲間から確かに見えた。まもなくその現象が終わる時刻に差しかかっていた。お昼前の頃合いに、「これは何だろう」、そして「見たんだな」と思った。偶然に目に入って来ただけなのか◇「天地人」、神仏天にありて、そのみ光、地を照らす。地上の人々の希求する「光」こそが命のみなもと。梅雨の昼の頃に横光利一の小説『日輪』を思い出した。「太陽は入江の水平線へ朱《しゅ》の一点となって没していった。樫鳥《かけす》が習い覚えた卑弥呼《ひみこ》の名を一声呼んで眠りに落ちた。」と。〈名取〉

(8月6日号掲載)

 この度、はからずもコラム欄のバトンを仰せつかりました。非才な私には過大な役割であり、まだまだ経験の乏しい若輩でございます。◆会社は、去る人、そして新しくなった人、様々ですが引き継ぎがうまくなされないと組織は混乱します。特にこの業界においては、待ったなしの世界ですから継続性が問われます。オリンピック選手のような、スピードに乗った切れ目のないバトンタッチが理想ですが、なかなか現実はうまくいきません。よいバトンタッチを実現させるためには、バトンを渡すという気持ちとバトンを受け取るという気持ちが一致しないと駄目です。最後までスピードを緩めることなく走り抜いた前任者の力が大きかったと思っております。◆また、百聞は一見にしかずという言葉がありますが、百聞は一体験にも満たないと思っている人もいるはずです。前任者の走るスピードと比較できるわけではありませんが、良いバトンタッチだと言われるように、現状を正しく理解した新しい変化を起こし、出来るだけナマの声を聞き、夢を持ったコラム欄にして行きたいと考えております。そして、また、次にバトンタッチ。

(8月3日号掲載)

◆次期総選挙は「政権選択」の選挙と言われているが、自民党が揺れに揺れている。もし、民主党が単独あるいは野党合わせて過半数を制すれば、政権から遠ざかる自民党は空中分解することもあり得る。前の野党転落で、自民党議員は野党暮らしができないと痛感しているはずだから◆対して、前哨戦の勝利で追い風に乗る民主党の公約には、「高速道路の無料化」が含まれている。まずは地方部からというが、それではその後の維持管理は誰がするのかという疑問がわく◆高速道路の維持管理費用を補助金で賄えば、道路予算を増やさない限り、一般道路にツケが回るのは必然。それでなくとも維持管理費用が増加傾向にある中、道路整備の順番待ちをしているところにとっては、厳しい話となる◆高速道路を無料化するということは、ゲートも不要となるのか。ある自動車関係者は、「ETC車載器への補助金交付は、在庫の一斉処分セールだったのか」と首をひねる。先は不透明だが、政治が安定しないと、矛盾が拡がる。国民の一票が舵を取る。

(7月30日号掲載)

◇夏休みがはじまる。子ども達は夏の思い出をどのように過ごしてつくるのか。町内の子ども神輿が連休のある日、町をねり歩いた。「ワッショイ、ワッショイ」のかけ声が次第に近づいてくる。早朝、広報車のスピーカーから「お神輿が来たら応援よろしくお願いします」と子どもの声◇通りに面した10軒の家からは、僅か2軒しか門口に出ている者がいなかった。可愛そうにー。何事も活発な隣町の子ども神輿のときには大勢の父兄共々、出店まで繰り出し子ども達も楽しそうだった◇地域の催し物一つとっても盛り上がりに差が出てしまうことは、ままある事ながら地域の一体感の創出にはそれなりの知恵と創意・努力が求められるようだ。大人自らが家に引きこもってばかりいては、子ども達にも若い親達にも届くものはない◇地域力は人間力から、人間力は党派の垣根を越えた信頼感の醸成により、人は思いもつかないようなエネルギーを生む。たとえ、町の裏通りに人の声すら聞こえなくなったとしても、人の気配があれば、賑わいは取り戻せ笑顔をも呼び戻せる。

(7月23・27日合併号掲載)

◇涼しげな梅花藻の白い小さな花が「山形五堰」に蘇った、とテレビで報じていた。きれいな水の流れは、それだけでありがたいー。マーケットが寺町手前まで建ち並んでいた頃、この堰に落ちて命を落とした幼子が何人かいる◇三輪車ごと堰に堕ちても、悲鳴の声が大きかったため死なずに生き延びている展望子は運が良かっただけ。その「山形五堰」の一つ、山形市七日町にある御殿堰を復活させ、堰の景観を利用した商業施設がつくられる◇この一帯が美しく生まれ変わるのは喜ばしい限りだ。明治44年の山形市大火で、この「御殿堰」を境に北側一帯の類焼に比べ、南側への延焼が食い止められた話を生前祖母から聞いた。昭和全盛期まであった銭湯「玉の湯」の近くに、長源寺門前の檀徒らが火防の神秋葉大権現の社を建立したとも◇霞城のお堀に入るこの「御殿堰」、他の堰での梅花藻の花咲くようにこの七日町を流れる堰にも水草が涼しげに茂る風情を想像するだけでも楽しくなってくる。一服お濃茶でも頂ける、そんな至福の空間が叶えられれば、また奥羽連峰の水脈に辿り着ける思いにも│。

(7月20日号掲載)

◇民主党の追い風が続く。政治家さんたちの〈高邁な精神〉など、こちら物心付いてこの方、見たことも聞いたこともない者の一人として、嵐を呼ぶ季節風は歓迎だ。酸欠状態の政治状況を脱するには、新鮮な酸素がどうしても必要だからだ◇あの強力な石原軍団の東京都政にも、裕次郎のごとき嵐を呼ぶ男どもが異なる立場から、兄の慎太郎に向かって迫って行くのか。国政においては言わずもがな、自民党の〈豊富な人材〉の言葉が過去のものになりかけようとしているこのときにである◇同党の起死回生の妙案は、今や皆無に近い。余りにも長すぎた一党支配には、平家にあらずんば人にあらず、のような驕(おご)りが確かにあった。この程度ならいいだろう、国民にも反感は持たれないで済むという類の解決策が余りにも多かった◇国民もこれに浸り切り、安穏と眠りこけ、無批判・無為・無関係を決め込んできた。これからの政治にはそうはいかない。こちらが無策であれば真綿で自らの首を絞めることになるからだ。民意が広く正確に整理され政策に生かされるべきマニフェストを精読することにする。 

(7月16日号掲載)

◇市民の手で勝ち得ていない国の政(まつりごと)はどうしても他力本願になりやすい。世襲問題など挙げればきりがないが、リチャード3世とかナポレオン3世とか、あちらふうにわが国も鳩山一郎3世とか小泉又次郎3世とか、元首・宰相にとらわれないなら、そう表現したくもなる◇世襲制度には旧いイメージしか抱けないが、命脈には流れとして新風を、そして外からは新しい血を入れることは今に始まったことではない。〈世襲〉の弊害が国政にまかり通ることがあるのは、〈風土〉が淀み腐ったとき。クローンないしコピー種族が増えて〈国民〉が小馬鹿にされるが悲喜劇が面白、とも◇そんな中で「日本丸」の航海は、多難な荒海を如何に操舵するかにかかっている。地球規模の問題がストレートに家庭の問題になりかけている。いや、もうすでになっている。「エコ」の時代に突入し、ゴミ分別作業用のビニール袋の有料化が山形市でまもなく開始する◇カラスも来なくなった町内のゴミ収集所だが、中央・地方の行政がうまく機能するその末端に市民があるのでない。「民」を戴いた行政こそ理想。

(7月13日号掲載)

◇早朝、朝顔の苗を届けてくれた知人と何気ない会話で出勤前を過ごした。
退職後の生活のリズムの変化には、無理せずにある程度の枠を枷(かせ)て、目標を持って息長くやり続けること―、とアドバイスしてくれた◇知人は気の多い人で、趣味も広いがライフワークは崩さない。〈ぶれない〉限り、どんな趣味をやろうともびくともしない。世界も広がる。趣味と本業を上手く仕訳している。こちら見習わなければならないことが多くある。彼も数年前までは会社員◇今、本業がフリーの編集者。理想的なリタイヤのありよう。こちら、彼とはジャンルが違うからおそらく〈朝顔〉の饗宴は可能でも異なる本業での作業手順や段取りにおいては〈競演〉にも。要は退職後に自転車乗りに興ずるかボランティアに力を注ぐかという生き方の選択だけが退職後の選択ではないということだ◇まずは第1に保健体育を必須科目にしよう。5教科も懐かしい。仕事はこれ人に仕えるということより〈事に仕える〉ということだから、〈事〉の本質を見失わない限り、苗は育つ。花も咲く―。

(7月9日号掲載)

◇労働局が推進している「快適職場推進計画」の認定制度を申請する事業場・工事現場が増加傾向にある。国土交通省が推奨していることもあり、一定規模以上の直轄工事現場は申請率が高いようだ。企業によっては、民間工事も含めて積極的に取り組むところも少なくない◇しかし、この認定制度は、労働局から認定証が交付される以外、メリットというべきものがない。労働局側では、この制度を発注側からの評価につなげたい意向を持っているが、今のところ実現には至っていない◇公共工事の発注者によっては、この制度を「当たり前の取り組み」と冷めた見方をする人もいる。当たり前のことをあえて評価する必要はないという姿勢。一理はあるのだが、労働環境の改善につながるものだけに、評価しても良い気がする◇整理・整頓が行き届き、働きやすい環境づくりに取り組む現場は、その多くが施工管理及び安全管理も決め細やかと評価する人がいる。「快適職場」づくりは当たり前のことではあるものの、その当たり前が大事であることも忘れてはいけない。

(7月6日号掲載)

◇友人が朝、河川敷を散歩していたとき、老婆が斜めに倒れていたのを目にし、近づいてみたら首に下着のような布を巻いて気を失っていたという。ビックリしてたじろいだが、そこはもとJRの駅長だった彼、冷静に状況を見て、微かに呼吸していると判断した。救急と警察に同時手配、老女は一命を取りとめたという◇アルツハイマーの症状がある人だったということで、家族の人も常日頃心配していたらしい。老女を自死への道に駆り立てた要因は推測するしか出来ない。現代人はこの〈生きにくい〉時代を、老若男女とも、人種や性別年齢に関係なく目の当たりにしている◇日本の子どもの5人のうち4人が〈いじめ〉の被害者であり、同時に加害者であるという。国によっては人格権や生存権すら認められていないような地球規模での〈格差〉がまん延している。富める者とそうでない者、力のある者とそうでない者◇自立したくても出来ない人、したくない人もおり様々。ボーダレスの世、情報だけが無数に飛び交う。正しい判断は一つの基準から。「権利」は「正義」の複数形。

(7月2日号掲載)

◇平成20年度山形県土木部及び農林水産部の「落札率別工事成績評定点数結果」(対象工事500万円以上)によると、全体平均点数が75・8点となっている。落札率70%未満では、工事成績評定74・3点の工事が11件。同70〜80%未満では、工事成績評定75・5点の工事が237件。同落札率80〜90%未満では、工事成績評定75・9点の工事が208件。同90%以上では、工事成績評定76・0点が562件となっている◇このことから、落札率別の評定分布は、落札率が下がると工事成績は低下する傾向が見られ、落札率が80%未満では、平均点より低下する傾向が見られるという。落札率の高低は応札者にとっては極めて関心の高い事柄、まして工事成績評定点数となれば、その相関関係は軽視することが出来ない◇入札監視委員会などで委員の方からよく「落札率が高過ぎる」とか「低過ぎる」とかの意見が出されるときもあるが、事案によっては妥当な数値かどうか、品質確保の観点から判断基準も厳しくなる。同時に「90%超」が安易に高いとは言えない。

(6月29日号掲載)

◇東京都杉並区高円寺に下宿していたときがあったが、その杉並の井草地区に都の不燃ごみ中間処理施設があったというのは最近まで知らなかった。建設されたのが1996年というから、住んでいた時分からはずいぶんと後のことになる◇井草に住む知人が咳き込みの激しい声で電話をかけてよこした。「どうしたの、その咳は」と聞いたが、「ただの風邪だよ」という。昔、新聞か何かで読んだ「杉並病」という言葉を思い出した。冗談にも言えないこと、と思いつつ「もしかして」と脳裏にうかんだ◇東京都は、はじめ中間処理施設から環境基準を超える化学物質は検出されていない、と突っぱねていた。住民の健康障害との因果関係を認めなかったのが2002年にそれを認め損害賠償することに決めた◇科学者グループの調査によると実に400種類もの化学物質が検出されていたという◇処理施設はなければまたそれで困ることながら、どのような施設がベストであり、設置する場所の選定にも周辺環境の変化に気を使い、継続的に安心・安全の確保がつきまとう。油断大敵。

(6月22日号掲載)

◇自民党改革派により、国民は1度ならずも2度まで騙された。改革が特定の利権に結びつくのであれば、改革の名には値しない。改革の前提は国民にとって何より公平でなければならないはず。小泉行政改革は、公けに「義」を行使したとは思えない◇よくよく見れば発想は実に私的である。痛みの伴うべき所を見誤ったばかりでなく、それを機械的処理しようとして、あの「かんぽの宿」をめぐる鳩山総務相の辞任劇にまで及んでしまった。自民党の自助努力をアピールするには絶好の鳩山発言だったのに、内閣支持率をまたまた下げてしまった◇方や民主党、「政権交代」のことばかり大声で叫んでいるものの、鸚鵡のようなかけ声ばかりで中身がわからない。政権奪回したら、出来のよい「官僚」たちから馬鹿にされ、振り回されたら話しにならないだろう。政治力をどのように発揮出来るか、こういうときにこそ明確に打ち出すべきなのに◇似たりよったりでは、国民の「公」がまたまた霞んでしまう。やはり、はっきりと世の中が良い方向に変わった、と分かりやすく政策を展開し、示してほしい。

(6月18日号掲載)

◇国の無形文化財<チャグチャグ馬コ>が今日盛岡市内をねり歩く。鈴をつけた小荷駄飾りの馬の背に、お化粧をしてきれいに着飾った幼子たちが跨る。落馬しないようにしっかり鞍に括られ八幡神社までの15キロの道程を「シャン、シャン、パカパカ」と約100頭ものお馬の行列だ◇馬の神さまへの晴れ舞台とも。南部駒は農耕馬と共に軍馬でしられる。舞台といえば、1昨日の13日、北上市の「さくらホール」でロシア・ナショナル・フィルハーモニー交響楽団とあの盲目の天才ピアニスト辻井伸行さんとの共演が大成功裏に終わったばかりという。梅雨に入った東北だが北の方から華やかな調べがこちらにも響いて来そうだった◇大好きなラフマニノフの「ピアノ協奏曲第2番」のCDを棚から取り出して聴いてみた。11月5日には山形テレサでも彼の演奏会が予定されているという◇やはり歌舞音曲が現代人には欠かせない。太古の昔から人類に添うように歌も舞も音曲も身近にあった。

(6月15日号掲載)

◇竜山川沿いに住む職員がヤマメとアブラハヤを釣り上げた知人から、「食べるならあげるよ」と言われ、その気になれなくて断ったという。その上流部に位置する芸工大付近は、もはや屈指の住宅街に変貌、そのまた上流部には昔からの集落、土尾・八森・神尾などの地区がある◇その上方には宝暦13年に築堤された八竜沼、小学校のときに遠足にきたところ。請雨の石塔もある。この一帯は熊が出没し油断は出来ない。ブラックバス釣りの若者がロッドをしならせ、何度もルアーを水面に着水させている◇数年前、この近くを走る有料道路上で、買ったばかりの自動2輪の試運転をしていた人の車に、突然、熊が飛び出してきてこのオートバイにぶつかった。衝撃で乗り手は放り投げられたが、幸い命には別状なし。逆に熊の方が即死した。オートバイの損傷といい、大変な試運転日となったらしい◇近くには「野草園」もあるが、昔のように安穏と単独のアウトドア・ライフとばかりはいかなくなった。それでも小学生たちが下草刈りを実習し、ムラサキシキブを植樹したという。いかにも緑の季節である。

(6月11日号掲載)

◇梅雨に入りそうな県内の気象。会社に隣接する「ふれあい公園」の樹木に鶯(うぐいす)が巣を作っている気配。素晴らしいさえずりが長時間続く。有り難いことのように思える。まさか同じものではないと思うのだが、会社から数キロはなれた家の庭にも鶯がたずねてきてくれた◇5分間ほどさえずって、そのうち居なくなった。それでも気分は得をしたようで、幸せな時間が流れた。こんな街中に鶯が、その割りには雀の姿が少なくなった。田に水が張られた途端一斉にカエルの鳴き声が聞こえてきたのが、新しく家が建ってそれもそうでなくなった◇このように確実に身の回りには物理的な変化がある。茨城の友人から「仏様に供えて」と、「金時」というラベルが張られた大玉のスイカが送られてきた。コンビニ経営者から転じて今ではすっかり農業人になった◇茨城のスイカは、今でこそ山形県尾花沢に取って代られたというが、茨城スイカの命脈は現在も立派に息づいているのだ。大玉「金時」は美味―。

(6月8日号掲載)

◇「翁」(おきな)の会にはじめて参加した。千歳・翁・三番叟と、能楽では、「翁」は能にして能にあらずといわれるそうだ。《とうとうたらりたらりら。たらりあがりいららりどう。》意味不詳で有名な「翁」の詞章。しかし、初参加の「おきなの会」は、実に明確な今に通じる言語と歌謡がちりばめられた◇厳粛な仏事の後に場をかえたところは、明鏡止水も確かな「花みずき」の空間。幕屋の奥に霊宿る「おきな」の暖簾が一同を迎える◇千歳の山の手向に「翁」を迎えるように、それぞれが恭しく捧げ、故人への感謝とともに、天界から今この地に降臨して、この場に天下泰平・国土安穏・五穀豊穣の響きが広がるように、不思議なほど広やかな時空となり、色とりどりに現世からの歌声が響いた。祈りが大きく木霊する。参列者一人ひとりの心に映ずる唄に変わる◇「花みずき」の「おきな」に教授は《菩提樹》を捧げ、《パリ祭》が近づいて来ましたと《パリの屋根の下》が流れる。もう、この季節か。《さくらんぼの実る頃》の季節。

(6月4日号掲載)

◇建設業および関連団体の年度総会が続いている。今は懐かしい各界のトップリーダーが相次いで交代しているのだ。取材を通して見てきた業界の如何に多難な今日であることか!それがヒシと伝わって来る。小欄は常に現実からの逃避のように、あえて個人に私して浮世離れの事柄にのみ終始してきた。年月のみを徒に重ね過ぎてきたのかもしれない。後の書き手も育っている。当然、バトンタッチの節目が今である。ふと6月のカレンダーに目が行った◇「写真の日」と刷り込まれていた。今後は毎年この時期の「総会」の写真を写させてもらう機会もなくなるだろう。業界リーダーのメッセージが胸に迫ってくる。後を引き継ぐ業界組織のリーダーのみならず各企業トップの心中、ひた走りに走ってきた人であればあるほど、胸のうちに去就するのは<勢い>への熱いまなざし◇「希望」と「元気」が「明るさ」を伴って大事な何かを前に推し進め、ものを「生み」出す。創造することの喜びが伴えば一層幸いである。家のパソコンが正常に戻り世界の何かが再び見えてくる。

(6月1日号掲載)

◇《狂気の沙汰》などの言葉を使わなくて済む世であればどれ程よいことか。それがそうでないから始末が悪い。《始末の悪い》事件や事故が多すぎる。お隣韓国と北朝鮮からは異なる二つの特大ニュースが飛び込んで来た◇距離が距離だけに遠眼鏡で眺めているようなわけには行かない―。北も南も日本も、政情・世情不安が何よりもよろしくないこと。それぞれが異なる形で《不安》を抱えこんでおり、この不安をもたらす直接・間接の原因を互いに、人のせいにしてしまいがちに◇訳ありの政情には世情は大概大騒ぎするか、冷ややかに知らぬ振りを決め込むか、またはほんとに知らずに眠り込んでしまうか。決まって北も南も日本も先頭を走るときは、訳ありの政情に肯定や否定を明瞭にして臨む◇そのどちらでもない、として穏やかでいることが出来なくなること自体、《不安》と《不信》を増巾する。過激な実力行使は何かに引火すれば人間の《狂気の沙汰》を回避することが不可能になる。

(5月28日号掲載)

◇60年代の学生のとき、アンソニー・パーキンス主演の映画『審判』をみた。人間不条理の世界を描くF・カフカ原作をオーソン・ウェルズが脚本・監督した映画だった。最初から最後まで見るものに《不安感》を駆り立てる不気味な怖さがあった◇《罪》そのものが明らかにされぬまま、青年主人公《K》にはじわじわと《嫌疑》のみが重く覆いかぶさっていく。一体誰が、何のために、どうしてこの自分に《罰》を―。しかも《死》にいたる極刑を身に受けなければならないのか◇理不尽な《裁き》がこの映画には満ちていた。曖昧な罪状がまるで裁かれるためにのみ一人歩きするように《K》に向かっていた。もしかしたら、《K》とは生存する人一人ひとりにつき付けられている分身の《K》かもしれない◇この5月21日から日本の「裁判員制度」が本格スタートした。《法》は多くの《権利》を保護しつつ、それを阻む事件に対する《審判》を行う法廷。裁判員に選ばれた人が不安がる思いの先にもしかして、法理論ではなく、不条理の世界を垣間見ているからではないかとも思われる。

(5月25日号掲載)

◇19日の早朝、県内を低気圧が襲い、まるで台風のように強風が吹き荒れた。庭の草木が大きく揺れ、池や側溝に刈り落としたようにカナメモチの葉が散った。青葉のこの時期には、<青あらし>という季語もあるくらいだ。思い出せば、「青嵐会」という自民党タカ派の政策集団もあった◇タカもハトも空を飛ぶ。ハト派発言でスタートした鳩山由紀夫民主党党首、公園や駅のプラットホームの人ごみをも怖れないで棲むドバトやキジバトのように確実に地表近くまで目線を低くして欲しい◇権力を嵩に冷酷に上から弱い者を鋭く見下ろす人間の、特に政治家集団グループから、ハトはいつも小馬鹿にされるように狙われる。ハトも怒ればタカにも勝る逆襲だって夢物語ではないだろう。「ぽっぽっぽ、はとぽっぽ、まめがほしいか、そらやるぞ、みんなでなかよくたべにこい」の世界がいい◇タカ一羽生きるのにハト何羽必要なのか。数に勝るのは本来がハト、猛禽は絶滅種に瀕しているものもある。

(5月21日号掲載)

◇博士論文の水準に達していた大学院生提出の論文が指導教官の准教授により、2度(2年間)にわたって受け取り拒否されていたという。大学院生(男子当時29歳)が将来を悲観し、昨年8月に自殺した。遺族側から指摘された疑問を受け、大学が内部調査委員会を設置して調査した結果、指導教官の指導に過失があったことを明らかにした◇お隣東北大学での出来事である。パワーハラスメントとも云えそうな悲しい報道であった。一人の将来性ある若い研究者を失ったことになる。「象牙の塔」から外に開かれたはずの最高学府での、指導する者とそれを受ける者の階層は、人間関係の異相をいまだもって人脈や学閥など、旧い体質・気質のままタコつぼ的徒弟制度の匂いを漂わしている◇正当な主張を抱きながら、その訴えを摘まれ、多方面に何ら相談することも出来ないような組織機能、このような時の救済制度、相談窓口すらないのだろうか。調査委員会をいくら立ち上げても空しい。事柄の後先が逆としか思えない。権威ある世界での人間関係の危うさ。

(5月18日号掲載)

◇ここまで来たら最後まで麻生内閣にやらせればいい。小沢民主党党首の遅すぎた辞任は、それはそれで頼りすぎた同党の複雑な党内事情などから。生育するには彼の党内「院政」を許すか許さないか、いかに脱皮し変わる勢いで正当性を残すしかない◇これは、自民党にとっても同じことだ。自民と民主の2大政党を確立するのは大いに結構なことだ。感心するほどぶれない「正論」の共産党も党綱領や政党名など思い切って見直すぐらいの党なら「正論」は一層国民の支持を得よう◇いずれにしても、国民は政党支持選択の自由はもとより、本来、国民自ら<一票>の重みを自覚し、流されるのでなく主体的に判断可能なセンスを自らに醸成する義務を負っているはず◇それを怠ると<衆愚>と政治家・官僚から常に<お上>の目線で見られてしまうことになる。再び、ここに来たら、解散よりも麻生政権を監視し続けるだけだ。当然、任期まで全うするのがよい。国民の審判でその選択眼が試される。

(5月14日号掲載)

◇ ほぼ「暦」どおりの連休が終わった。仕事の先には多くの「総会」が待ち受けている。いずれの業界団体においても、景況感と密接な係わりの中で、組織の運営がそれこそ創意工夫のもとに進められていくのだろう◇この連休の間、休養もさることながら、かえって普段の自分に与えられている仕事以外の作業が、たとえば「総会」の準備の文書作成とか、連絡とか増える人がきっと多くいるはず。何もかにもこの連休の間に準備を整えておかないと差ししまった日まで間に合わなくなってしまいがちにも◇身の回り私的な領分においても、隣組の年度総会の準備、檀家寺からの縁日祭で行われる大般若会祈祷会志納袋の届け、先祖100回忌、33回忌の打ち合わせなど、忘れてならないものまでその数は多い◇雑事とそうでないものとのきちっとした区分け、生きているということの故に避けては通れないものがまだまだ多くある。

(5月11日号掲載)

◇人間と同様に、あの愛すべき「豚」たちがいま大変な状況下に置かれている。人からうつされて風邪を引く繊細さが、また気の毒である。そういえば、人間にとりつく「悪霊」を一身に背負わされ、雪崩のように谷底に堕ちていく運命の「豚」を旧い物語も描いている◇豚インフルエンザに限らず、身近な動物たちが、人との共生の故に、その一生が人間にのみ寄与するためだけに存在しているかのようだ。トンカツ大好きなこちらは、育ち盛りの頃には手の届かぬ高価な食材であったのだ。サラリーマンになってからその反動で「かつ定」をよく口にした◇「食べてはならない」との戒めを守る人々からは、誹られ、断罪されるかもしれない。小羊を生贄として捧げる民も、豚を忌み嫌う民も、牛追い人も、日本の熊追い人もそれぞれが不思議に宗教的祭祀に及ぶ◇人間の「衣・食・住」に係わる〈豚〉の広範囲な寄与度は人類には極めて大きく、軽視できない存在の育種、本来免疫力の強い動物とか。実際、清潔好きであることは子豚と寝起きを共にしたことがある酪農家からきいた話である。

(4月30日号掲載)

◇渡邊二郎氏が『音楽と詩歌』(「思想」2007年第10号)と題し、興味ある文章を掲載していた。「音楽的気分と言語的表現との関係について」、お堅い雑誌がやはりお堅い形であの“シューベルト”を特集していた。小学校の音楽教室によく掲げてあるシューベルトの肖像画を思い出した◇〈子守唄〉や〈のばら〉、はてまた〈アベマリア〉とか、かつて教科書の音符をみながら口ずさんだ事のある分かりやすいメロディー、その歌曲の王シューベルトを「シューベルトは、自分の心の琴線に触れてきた数々の詩歌に即座に次々と美しい旋律を編み出して、600曲にも及ぶリートを創作した◇それにしても、シューベルトの歌曲を動かしていた詩的な音楽的気分とは何だったのであろうか」、と問いかけている。「その一面を考えるために」、と渡邊氏はシューベルトとニーチェとの関係について、「およそニーチェは、少年時代から大学生時代を通じ、早くからシューベルトに親しみ、ドイツ音楽と自分を支える柱の一つとしていた」という。

(4月27日号掲載)

◇霞城公園に昔の仲間たちと集まった。アルコール抜きの観桜会。二の丸に架かる東大手門橋を渡り、本丸に架かる一文字橋の上に初めて立ってみた。石垣の反りが美しい。急な武者返しの造りではないが、将来、櫓が建造されれば一層の風格に◇園内は老若男女、大勢の人たちがまさに春爛漫真っ盛り、広い広場では講談の一龍斎貞寿師が「天地人」にまつわるくだりを口演している真最中だった。歩き疲れた一行の数人がなぜか早く城を抜け出したいという様子で先を行く◇彼らは酒豪でないが確かな上戸、近くの蕎麦屋「最上屋」を目指していた。ここは旧町名香澄町小鎹(こかすがい)、車も入れないほどの路地だ。その一人は木の実小路の住人、「城の練兵場に行くと人の骨が出るぞ」と言われたそうだ。宮町住人の先輩は「第3小学校のところを昔、伊賀町と言っていた」と◇これは初耳。あの時代だもの、忍びがいてもおかしくはない。最上と伊賀衆、余り聞いたことがない。調べてみたら山形市宮町5丁目には13人の伊賀衆が居住していたところという。近くには「豊栄稲荷神社」が。

(4月23日号掲載)

◇合唱クラブに入っている人は、自分の家でどのように練習するのだろう。向こう三軒両隣から、めっきり歌声が聞こえなくなった。隣からは民謡の合唱が、向いからはピアノで兄妹が二重唱、裏の家からは奥さんが台所で大津美子の〈ここに幸あり〉が◇こちら、母親が大正琴に熱を入れていたため、何かと賑やかな隣近所であった。いまでは「音」を出すのが憚られるようで、気が引ける。防音装置のある「教室」やカラオケでの練習なら事済むはず。しかし、お金と移動時間がもったいない◇日本の球界で初の女性審判として高校野球神奈川大会の開幕戦で球審を務めた藤原三枝子さんが、家でのトレーニングは徹底して昼間から雨戸を締め切り、電気をつけ、全身が映る窓ガラスを姿見にしての大声で、「ストライク!」、「ボール!」、「アウト!」の各フォームを繰り返していた◇こういう専門の人でも、雨戸を閉め切るのかと思ったが、こちらはどうせ気ままなガチャ・ガチャ・バンド。「生きているよ―」のサイン。〈生存確認音〉を発している。耳障りな音がまだ続く―。

(4月20日号掲載)

◇「魔女達夢」(マジョラム)というブログに目が行った。春の花が数多く掲載されていた。ヤグルマギクやヒメキンギョソウ、ハナニラ、ツルニチニチソウとこちら見慣れない花々、庭の片隅にカタカゴの花が今年も一輪咲いてくれた◇忘れずにそっと咲いてくれているような姿が愛おしい。忘れることの多い日々なのに、健忘症と言い逃れするのは嘘つきの証。<忘れな草をあなたに>とかつて菅原洋一が歌った歌詞を思い出した。木下龍太郎作詞のこの詩◇<別れても/・・・/心の奥に/幸せ祈る/言葉にかえて/忘れな草を/あなたに、あなたに>、と哀切極まりない。この花の名の由来こそ、ただの別離ではない死別の詩(うた)の原型。中世ドイツの騎士ルドルフとベルタの悲恋伝説からのものだ◇花にはどのような花にも常に不思議なほど人の<死>の影を伴っている。そして朧な月夜に照らされながら、花々は、また惜別の情を隠すように昼は自身を精一杯に輝かせ、人の目を惹きつける。

(4月16日号掲載)

◇第3小学校のグランド脇を通ったら、枝垂桜が仲良く並んで咲いていた。気温も上がり桜が開花直前だ。七日町通りのホットなる広場の裏通りに山形屋台村「ほっとなる横丁」の建設工事が急ピッチで進められている。オープンは桜のこの時期には間に合わないが6月にはお目見えする◇下戸も上戸も皆ガヤガヤと賑やかになり、ついお店をハシゴする人も出てきそうだ。それはそれで楽しみが増えるというもの。花より団子、程よく飲み食いできる健康な人は幸せそのもの。のどかな春は気持ちが良い◇知らない山形の隠れた名所探しに出かける絶好の機会。ただ寝起きだけして何十年も過ごし、結局何も知らなかったでは余りにも情けない。小さな楽器を持って外に出かけ、何でもいいからプカプカ吹いたり鳴らしたり◇夜中、井の頭公園の大木の下に座り、横笛を吹いていたら、勤め帰りの親父さんが、「学生さん、何吹いているの?」と訊ねられた。高価なフルートなど買えなかった。昔、フルートもどきとでも言えそうな金属製の横笛があった。桜の下で今度は篠笛か。

(4月13日号掲載)

◇4日のNHK総合テレビ、プロジェクトJAPAN・プロローグ「戦争と平和の150年」は、日本と世界を今に分かりやすく伝えていた。現在、北朝鮮と日本両国にみられる、極めて不自然な関係の原型が明確に示されていた◇欧米列強に負けまいと明治新政府は富国強兵策を掲げ、帝国植民地政策として朝鮮半島や台湾に民族同化を強いた◇全ての溝の始まりがこの植民地政策からスタートしていた。誇り高き異民族を心底では蔑視、数限りない同化の名で抑圧が繰り返された。かつてプロシアの鉄血宰相ビスマルクが進めた、あの飴と鞭の「現在の大問題は、演説や多数決ではなく、鉄(大砲)と血(兵隊)によってこそ解決される」と◇遠く日本の明治政府もドイツプロシャの影響を受け、大正・昭和の時代へと突き進んでいった。困難な民族の同化策は、朝鮮半島を経て満州そして中国そのものに。山辺町が生んだ世界的偉人、「世界の良心」といわれる安達峰一郎博士(国際司法裁判所第4代所長)の和平への打電が本国に―。

(4月9日号掲載)

◇「星の王子さま」(サン=テグジュペリ)に登場する王子さまやキツネや「ぼく」を思い出した。「別れを悲しむ「ぼく」に、自分は自分の星に帰るのだから、きみは夜空を見上げて、その星のどれかの上で、自分が笑っていると想像すれば良い◇そうすれば、君は星全部が笑っているように見えるはずだから」と語る。透明なこの美しい場面で王子はヘビに噛まれ、砂漠に倒れた―。そして現実の人間社会、大宇宙に向かって飛び立った若田宇宙飛行士は、まもなく放たれようとしている後からの<衛星>をミサイルというかも◇「ぼく」とかの国との「不信」の溝は修復の決め手のないままなのか。手順を疎かにしてきた双方二つの国の同じ惑星の異なる国、星の数を数え間違えるように「ぼく」たちは互いに間違いあった。それは悲しみを通り越した人間の愚かさと後代の人はいうだろう◇困った大臣さんたちが多すぎるのに、またまた困った宰相の発言、学習院で一体何を学習してきたのだろうか。EUの混迷ぶりを知りながら、根っこにほら吹きでは再び嘲笑されよう。

(4月6日号掲載)

◇肉眼で「世界遺産」を見たことはない。この種の映像が好きでなるべく時間を割いて見ている。歌手松任谷由実がスペインに脈々と息づくフラメンコを紹介していた。『探検ロマン世界遺産』のテーマ曲をつくったご当人がアンダルシアの魅力ある風景と人々との交流を感慨深げに伝えていた◇スペインもよいが松任谷由実の歌がこの頃、耳にスーッと入ってきて心地良い。若い頃は、あの強靭で不安定な響きの個性的な歌手中島みゆきのメッセージが気になって聴いた。その後、いい年をして竹内まりあの都会的センス溢れる楽曲・歌詞に。◇スペインに魅せられている人は少なくない。インドからの民が流浪するようにアラビア砂漠を経、西の山々を越え、地中海を臨むヨーロッパの地へ。フラメンコの源流は旅人のまた旅人のよう。オリエンタルな響きー。

(4月2日号掲載)